初投稿はやっぱりルサにしたいと思ったので
サイトに載せる用の小説持って来ました。
エイプリルネタなのでサイトに載せるのはまだ先ですが;
またその頃に手直し入れるかも知れませんが、一応完結はしてます。
続きからルサです。
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April Fool's Day
「あたし、あんたの事が嫌いやけ。」
ルビーが次のコンテストでポケモンたちに着せるのだろう
衣装を作っているとき、あたしは唐突に言ってやった。
もちろん本当に嫌いだから言ったわけではない。
今日はエイプリルフールだ。
普段は優勢な彼に、今日くらいは一泡吹かせてやろうと思ったのだ。
さぞかし慌てるだろうなと、
顔がにやけるのを必死に堪えて彼の返事を待った。
しかし、ルビーの発した言葉はサファイアにとって予想外の事だった。
「…そう。でも僕はサファイアの事、好きだけどね。」
無表情でそう言い放つと、困惑しているサファイアを他所に
再び作業を始める。
――”好き”
普段ならこれ以上ないくらい嬉しい言葉の筈なのに、
サファイアはその言葉の意味を図りかねていた。
今日はエイプリルフール、嘘をつく日だ。
常識面では自分よりも知識が豊富な彼が、
果たしてそれを知らないなんて事があるだろうか。
だとしたら、彼の言う”好き”の本当の意味は…
「それって、どういう…」
「けど、君がそう言うなら出てくよ。居座って悪かったね。」
もしかして、嘘をついたことで怒らせてしまったのだろうか?
それとも本当はエイプリルフールを知らなくて、彼を傷付けて――?
はっきりとした理由はわからない。
けれど、自分のあの一言が和やかだった雰囲気を
ぶち壊しにしてしまった事だけは事実だった。
どうしてあんな事を言ってしまったのだろう。
サファイアは自分の言動に果てしなく後悔した。
不意にルビーへと視線を送ると、既に作業を中断し、
バックを肩に背負い外へと歩き出していた。
サファイアは反射的にルビーの背中を追いかけ、
服の袖を思いっきり掴んだ。
ルビーは足を止め、サファイアを振り返る。
「……何?」
ルビーに問いかけられるものの、上手く言葉が出ない。
怒っているだろうか、それとも本当はふざけているのだろうか。
彼の気持ちがわからなくて、怖い。
――違う、彼が遠くに感じるのが怖いんだ。
目から涙が溢れそうになり、彼に見られまいと俯く。
暫しの沈黙。
ルビーは何を言うでもなく、ただサファイアを見つめていた。
袖を掴む手に力を込め、やっとの事でサファイアは口を開いた。
「……なして、そげなこつ言うと…?」
「………嫌いだって言ったのは君だろ?」
違う、”嫌い”なんて真っ赤な嘘。
本当はどうしようもないくらいあんたの事が”好き”なのに。
彼が遠くに行ってしまいそうな気がして手を伸ばしたのに。
いかないで、そう言いたいのに素直になれなくて。
何故、言えないんだろう。どうして、謝ることさえ出来ないんだろう。
「そうじゃなか!あたしが言ってるのは…っ」
留めきれないほどの涙が溢れてくる。
視界がぼやけてはっきりと見えない。
それでも構わず、ルビーに視線を合わせサファイアは叫んだ。
「……どうして”好き”なんて言うと?…だって、今日は…っ!!」
「知ってるよ、エイプリルフールだろ?」
彼の言葉に、先ほどまで止まらなかった涙が一瞬で止まる。
もしかしたら聞き間違いなのではないかと思い、
もう一度ルビーに聞き返した。
「………今、何て…?」
「だから、エイプリルフールだろ?
まさか、野生児の君が知ってる事を僕が知らないと思ったの?」
彼は気付いていたのだ、
自分の言った”嫌い”という言葉が嘘だという事に。
つまり、彼は嘘だとわかっていた上で自分を騙していた事になる。
「…かっ、からかったとね!?」
「ごめんごめん、けど君が悪いんだよ?嘘でも”嫌い”なんて言うから」
サファイアはキョトンとした。
「…今日は嘘をつく日なんやろ?」
「あのね…確かに今日は”嘘を吐いても良い日”だ。
でも”嘘を吐かなきゃいけない日”じゃないんだよ?」
「あ…」
つまりだ、彼は嘘だと分かっていても、
あたしに”嫌い”と言われた事にショックを受けて不貞腐れていたのだ。
思わず笑みがこぼれる。
「…なに、笑ってんのさ。」
「えへへ…何か嬉しくなってしまったと。」
「まったく…僕は結構傷付いたんだからね?」
「す、すまんち…。」
時間の経過は早いもので、気付けば外は日が暮れてきていた。
「…そろそろ帰ろうか、ママたちが心配するし。」
「そうやね。」
「そうだ、今日は僕の家で夕飯食べてかない?
昨日ジョウトの知り合いからたくさん食料が届いたらしくてさ。」
「行くと!ママさんの料理楽しみったい!」
いつものように他愛ない話をしながら元来た道を歩いていると、
急に隣を歩いていたサファイアの足が止まったのでルビーは振り返る。
「どうしたの?」
「えっと、その…」
「あたしもルビーの事…」
恥ずかしさから、最後の方は風に掻き消されそうなくらいの
小さな声になってしまった。
暫くしても彼の反応がなかったので、
「もしかして、聞こえんかったやろか?」と心配していると
次の瞬間には、思いっきり彼に抱きしめられていた。